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花まる日和。

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花の降る日に。その3。

赤ちゃんが生まれた後、
後産等をしているときに
まだ私の隣にいたHUCKLEBERRY氏は
気分不良で危うく倒れそうになっていました。

助産院で丸二日、ずっと私に付き添って
あるときは私に罵られ(痛みのため)
あるときは私のゲロを受け止め(痛みのため)
突然救急車に同乗し
病院に着いてからは
訳もわからないまま放置されていたので
本当に心配だったことでしょう。

そしていざ、陣痛室に入ってみると
お医者さんが私のおなかをこれでもかと押していて
私は苦痛で断末魔のような叫び声をあげていたので
目の前の光景に圧倒されたと思います。

出産後は私も茫然としていましたが
傍から見ていて、苦痛の肩代わりができなかった
HUCKLEBERRY氏は、
それはそれで本当に疲れたと思います。

赤ちゃんは呼吸困難で生まれてきて
生まれてすぐに保育器に入れられました。
そして点滴と抗生物質を投与しなければならない
旨の説明を医師から受けました。

「この状況をどうやって乗り切るか、これから数日が勝負です。」
と小児科のお医者さんに言われました。
その内容を色々HUCKLEBERRY氏に後ほど説明したときに
彼は無言でしたが
ただぎゅっと私の手を握り締めて

「DAISYちゃん、大丈夫だよ。
本当によくがんばったね。」

と言って帰って行きました。
とにかく面会時間が短く
そして赤ちゃんは新生児室のガラス越しに限られた時間しか
見ることのできない病院です。

しかも私たちの赤ちゃんは
他の赤ちゃんたちが新生児室正面の
大きなガラスの真下にずらりと並べられているのに
比べて、一人奥で保育器に入れられています。
生まれたわが子をガラス越しにしか見ることが
できなかったHUCKLEBERRY氏の気持ちは
どうだったのでしょうか。

出産当日は私も彼もとにかくすべてのことが
受け止めるには大きすぎたり、急すぎたりして
気持ちの整理もうまくできなかったし
未だになんか何が起こっているのかよく分からない
という感じでした。

助産院で赤ちゃんの心音が下がって救急車で
運ばれているときから
私はこの出来事が本当に自分の身に起こっているのか
にわかに信じ難く、
「これは嘘だ。」
と高まる鼓動の中思ったりしたのですが
実は助産院から病院へ搬送される際
ちょっとしたトラブルがあり
病院側が
「受け入れられない」
と言って私たちは数分、病院の外、救急車の中で
待機していたのです!!

ニュースで見る
「7病院受け入れ拒否後78歳女性死亡」
等といった言葉がめまぐるしく脳裏をかけめぐりました。
痛くて体は熱いのに背筋が凍るような感じがして
あまりの緊張と恐怖で
全身が焼けた後に凍るような感じがしました。

そのとき陣痛はすでに最高潮に達しており
この病院に受け入れてもらえなかったら(このとき午前4時半)
私たちどうなるんだろう。
赤ちゃんはどうなるんだろう。
というものすごい恐怖が襲ってきて
すべてが破滅の方向に向かって進んでいるようで
あんな怖い思いはしたことがありませんでした。

(幸いその後きちんと受け入れてもらえました。本当に良かった)


その終末感のようなものは出産後は多少薄れてきていたのですが
今度は私はなにか大きな間違いを犯したのでないか
この小さな命を危険に晒してしまったのは
私の責任で、これは取り返しのつかないことになってしまった
という自責の念に苦しめられることになります。
これは出産の肉体的苦痛と同じくらい
私を苦しめました。

何をしていても暗い闇がじわじわ襲ってきて
私の心を覆いつくしてしまいます。
何度も何度も出産時の恐怖がよみがえります。
悪い方向に物事を考えるよりも
これから自分が新しい命のために何ができるかを
考えるほうがずっとだいじだということはわかっているのに
とてもそんな気持ちになれませんでした。

出産当日はベッド上で自分を責め続け、そして
襲ってくるぬぐえない恐怖にただ打ちひしがれて
泣きながら過ごしました。

そして翌朝、部屋に様子を見に来た看護師さんに
新生児室に行って保育器の窓越しに赤ちゃんを触ってもいいと言われ
気持ちを切り替えて、はやる気持ちを抑えて、
赤ちゃんに会いに行きました。


足には抗生物質の注射が、腕には点滴の針が刺されて
いくつかのモニターが保育器の横につけられている赤ちゃんの
姿を見た瞬間、もうまったく自分が抑えられなくなり
さめざめと泣いてしまいました。

「ごめんね。こんなことになってしまった、本当にごめんなさい。」
と赤ちゃんに謝りながら保育器に着いている小さな窓を開けて
指を入れて初めてその小さな命に触れました。

胸が大きく上下しているのが見えます。
「ああ。呼吸をしている。生きてる。がんばって、がんばって、私たちの
ところに生まれてきてくれた。」
と思ったら次から次へ涙があふれてきて
赤ちゃんの顔もからだも全然見えなくなってしまいました。

その時、私が触っていた赤ちゃんの手が動いて
私の指をきゅっと握り締めてくれました。

前の日にHUCKLEBERRY氏が帰り際に
私の手をぎゅっと握りしめてくれたことを
思い出して、私の指を握り締めてくれた赤ちゃんと重なって

「ああ。私たちは家族なんだ。」
と思いました。
重たくて、お湯のように熱くて、大きな感情が足元から頭のてっぺんまで
逆流して私は嗚咽を漏らしながら泣きました。

「ごめんね。でも本当にありがとう。」
と心で思いながら、本当に小さな体の一部だったけれど
母と子初めての触れ合いは終わったのでした。






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初めて対面したとき。
しっかり目を開いてきゅっと私の指を握ってくれた赤ちゃん。
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by liar-basho | 2010-04-06 09:03 | 母ちゃんになったよ
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